2011年 10月 02日
『きことわ』を読んでここ数年芥川賞にはろくな作品がない。自分では買わずに借りて読んでいるので「金返せ!」とは言えないが、「(読むのに費やした)時間を返せ!」と言いたい作品ばかりだ。『きことわ』と同回に芥川賞に選ばれた西村健太『苦役列車』は半年ほど前に読んでいたが、こんな本を出版するなんて紙の無駄、とまで思ったものだった。
だからこの作品も「芥川賞作品だから一応読んでおくか」くらいの気持ちで手にした。
読んでの感想は……まずは、文章が上手いと思った。真綿にくるまれている感じ、とでも言おうか、とがったところ・ひっかかるところがなく、素直に読める。何でもないようだが、こういう文章はなかなか書けない。
だが、小説としてはつまらなかったとしか言えない。特別な事件が起こるわけでもないので話としても盛り上がりがないし、読後にも何も残らない。
ストーリーを楽しむのではなく、文章を味わう小説、とでもいう評価になるだろうか。
この作品自体はたいした作品ではない。が、これだけの文章が書けるのだから、「いいネタ」があれば素晴らしい作品を書き上げる可能性があるとは思う。
その将来性に芥川賞が贈られたのかも知れない。