日々の出来事、言葉との出会いを綴っていきます。何年後かの自分のために。

by usagi-kani

カテゴリ:本・ことば( 80 )

「アニバーサリー」に続いて窪美澄「晴天の迷いクジラ」を読んだ。
ストーリーはありきたりと言えばありきありだが、この小説の魅力は文章にある。
窪美澄ってこんなに文章上手かったっけ?

また、正子の章がすごくいい。
悪意がなくても、ちょっとしたズレで、人は不幸になってしまうし、人を不幸にしてしまう。わかっていてもどうしようもない……それが人生なんだろうな。

図書館で借りて読んだが、この本は買う!
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by usagi-kani | 2015-03-19 22:27 | 本・ことば | Comments(0)
窪美澄『アニバーサリー』を読んだ。
彼女の作品は『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』に続いて3作目(だと思う)。「性」を中心に据えて人間をよくとらえていると思う。
現在私が一番注目している作家だ。

戦争と東日本大震災。
二つの悲惨な出来事には数十年の時間差がある。
その間に社会は大きく変わった。文化が発展し、特に電化製品が進化した。女性の社会進出も大きく進んだ。その変化が女性や子どもに何をもたらしたかを的確に描き出している、と思った。基本的に私も作者と同じことを考えているので、共感できた。

以前に読んだ2作品も素晴らしかったが、この作品も(村上春樹なんかより)読む価値のある小説だ、と感じた。
世の子育て中の親に、あるいはこれから親になる人に是非読んで欲しいと思う。

印象に残ったところを書き抜いておく。
目標を持ったほうがいい。夢を叶えるために頑張ったほうがいい、と言われると、具体的な目標や夢を持たない自分が、なんだかだめな人間みたいに感じられる。自分が好きなことは、写真を撮ることだけど、それが目標や夢かどうかはよくわからなかった。

自分だけの洗濯機、掃除機。なにか一つを手に入れるたびに、自分が豊かになった気分になった。炊飯器、電子レンジ、電気ポット。温かいものをいつでも子供たちに差し出し、与えることが幸せだった。
少しずつ豊かになって便利になった。
そして、同時に、何かが少しずつ損なわれていったのだ。自分の知らないところで。

明るいものを、温かいものを、自分より後に生まれた人たちに渡していたはずなのに、それは自分が思っているよりも、ずっと冷たくて硬いものだったのかもしれない。真菜に言われたように、私たちは望みすぎたのかもしれない。もっと、もっとたくさん。二つの手のひらに載せられないものを私たちは欲しがったのだ。


自分がよかれと思ったこと、それが相手にどう受け取られるかはわからない。でも、私たちは私たちが手にしたものを子どもたちに、次の世代に手渡していかなければいけない。たとえ「負の遺産」などと言われようと。その連鎖こそが人間が生きるということなのだろう。

ネットで検索したら、作者がこの作品について話をしているインタビュー記事があったのでそれも載せておく。
たとえば2013年に『アニバーサリー』という本を出したのですが、執筆し始める前に3.11の震災がありました。
これは私の個人的な思いなのですが、男の人に対して怒っていたんです。それがすごくダイレクトに本に反映されています。ああいう有事があったとして、男の人の手は借りないよ、という。子どもを生みたくても、言い方は悪いけれど種だけくれれば、世代を越えて女同士は協調して生きていきます、という話だから、たぶんあれを男性が読むと相当キツいんではないかな、と(笑)。書いた後も、「これは書きすぎたな」と思う節はありますね。

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by usagi-kani | 2015-03-12 21:15 | 本・ことば | Comments(0)
こんな話を聞いた(読んだ)ことがある。

旅人がある村に立ち寄り、お世話になったお礼にと村人(長老?)にコーヒーをごちそうしようとする。すると、村人はそれを断って言う、「それはきっとおいしいものなのだろう。だが、今後手に入れる手段がない。だから、飲みたいのに飲めないという不満、もっとおいしいものがあるのにそれを口にすることができないという不満を感じながら生きることになってしまう。それなら最初から知らないほうがいい」と。

哲学的な話、ということになるのだろう。
知ってしまったら知らなかった昔には戻れない。
現状に不満を持つことになるのなら知らないほうが幸せなのか。たとえ二度と手にすることはなくても素晴らしいものを経験したほうがいいのか。

生徒たちの場合で言えば、こんなことだろうか。
校外の講習会に参加し、素晴らしく教え方の上手な指導者に教えてもらう。「この先生にずっと教えてもらえたら、自分の力をもっと伸ばせるのではないか」と考えてしまう。その結果、それまで特に不満も覚えていなかった部活動の顧問の指導に素直に従えなくなってしまう……。
部活動に限らず勉強でも同様のことはありそうだ。

さて、私がこのコーヒーの話を聞いたとき連想したのは夏目漱石の「こころ」だった。

「K」にとって恋はコーヒーだったのだな、と思ったのだ。

恋を、たとえ片思いであっても、苦しくとも甘美なあの感情を知ってしまったら、好きな人を想う素晴らしさを知ってしまったら、知らなかった以前には戻れない。
つまり、「K」は「道のためにはすべてを(欲を離れた恋そのものでも)犠牲にすべきもの」というそれまでの生き方を継続することはできなくなってしまったのだ。
自分の生き方を失ってしまった「K」にとって、選べるのは「死」しかなかっただろう。

一度の大勝を忘れられず、ギャンブル沼に落ちていく人。
愛し愛された経験が忘れられず、恋愛ジャンキーとなって自分をボロボロにしてしまう女性。

「一度だけの素晴らしい体験」は果たして「幸せ」なのか。

私は……一度だけであっても経験したいと思う。たとえそのために失うものがあっても

ところで、あなたは?
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by usagi-kani | 2015-02-16 21:24 | 本・ことば | Comments(0)
人と人とを隔てるものは無数にある。
生まれ育ち、職業、地位……。
それらはコミュニケーション等によって超えられる「川」である場合もあるし、そうでない場合もある。出自が違いすぎて根本のところでわかり合えないなんてことは現代でもいくらでもあるだろう。

女と女を隔てるものもおそらく無数にある。
恋愛(交際)経験の有無、性体験の有無、結婚しているかいないか、そして子供がいるかいないか……。
それぞれがどれほどの幅の「川」かはわからない。しかし、結婚と子供の有無は超えられない「川」であるように思われる。子供を産む性であるが故に……。表面上は親友のようにつきあっていても、いつか気づく日が来るのではないか、自分たちは対岸にいて、手を触れあうことはもちろん、言葉でさえ満足に相手に届いてはいなかったのだということに。

9年ぶり(たぶん)に読み返して、思ったのはそんなこと。そして9年前にもそんなことを思ったな、という微かな記憶。
9年経っても感想が変化しないのは……この話を真には理解できていないからだと思う。そして、たぶんこれ以上は理解できない、そんな気がする。
いい小説なのは間違いないけど、「女性向け」なのだと思う。男の自分はこの小説の世界とは「対岸」にいることを感じさせられてしまうのだ。男と女の間にこそ本当に超えられない「川」があるのだな、と感じる(そんな歌詞の歌謡曲があったが)。

印象に残ったところを少しだけ書き抜いておく。

「私はさ、まわりに子どもがいないから、成長過程に及ぼす影響とかそういうのはわかんない、けどさ、ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」

「そのツアーで、自由行動のとき何人かが屋台にご飯を食べにいって、全員おなか壊したのね。これって屋台が不潔だったからだと思う? 暗示にかかったんだと私は思うわけ。マニュアルがあるとさ、人って考えることを放棄すんの。考えないと何も見えない、何も心に残らない。」

「なんのために歳を重ねたのか。人と関わり合うことが煩わしくなったとき、都合よく生活に逃げ込むためだろうか。銀行に用事がある、子どもを迎えにいかなきゃならない、食事の支度をしなくちゃならない、そう口にして、家のドアをぱたんと閉めるためだろうか。そんなことを思う。
    ……
その思いつきに顔を輝かせ、早くも献立を考え始める妻を見ていて、小夜子はようやくわかた気がした。なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の脚で歩いていくためだ。」

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by usagi-kani | 2014-04-09 22:27 | 本・ことば | Comments(0)

「海賊とよばれた男」

百田尚樹「海賊とよばれた男」を読了。
「事実は小説よりも奇なり」というが、こんな男がいた(こんな会社があった)というのが素直に信じられない。実在のモデルがいるというのを知らずに読めば、ただの小説として受け取られ「現実にはありえないよ」で終わってしまうだろう。ひとつの伝記として読むからこそ価値のある小説ではないかという気がする。
私利私欲のためでなく「日本のため」に必死になって働く、それが結果として成功につながった、というこの話を読むと、働くってどういうことなのか、を考えずにはいられないだろう。
すべての働く人がこの本を読んだら日本は変わるのではないか、なんてことを思ってしまう。
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by usagi-kani | 2013-11-27 19:24 | 本・ことば | Comments(0)

読書記録

 このところ週1冊ペースで本(小説)を読んでいる。暇があればスマホをいじるようになってしまい、これではまずいと思って、意識して読書するようにしているのだ。
 その結果、哀しいかな、集中力が続かなくなった(たぶん歳のせい)ことを痛感したりしているのだが。
 ともあれ、読書記録として読んだ本を挙げてみる。

『私を知らないで』白河三兎
 こんな中学生いるわけないだろう、と早い時期に感じてしまって作品に入り込めなかった。中高生が読めばおもしろいのかもしれないが、50のおじさんには無理。と言いつつ一気に読んでしまったのは、作者の力ゆえだろう。それなりに人気のある作家として生き残るのではないだろうか。

『神去なあなあ日常』三浦しおん
 推薦してくれる人がいたので読んでみたが、「悪くはない」といったところか。これを読むなら他にもっと読むべき本がある、と思った。

『島はぼくらと』辻村深月
 評判がいいので手にしてみた。初めての辻村作品。登場人物のキャラがあまりに典型的すぎてそこに「浅さ」を感じてしまう。作品世界を回していくためにはこういう「典型的」キャラが必要なのだろうが、現実はそうはいかない。4人が皆似たようなタイプなんてこともある。ま、自分にはあまり合わなかった、ということかな。

『何者』朝井リョウ
 二宮拓人は自分だ、と感じてしまい、終盤は読み続けるのが痛かった。ただ、この本の読者は皆そう感じるかも知れない。誰でもそういう部分はあるはずだから(李徴の「尊大な羞恥心と臆病な自尊心」に誰もが思い当たるように)。
 でも、心が大きく揺れ動いたのは間違いない。20~30代の青年に薦めたいと思った。そして、自分でもいつか読み返したいと思った。まだ、数ヶ月残っているが、これが今年のナンバーワンになるだろう。よほどの僥倖がなければこれ以上の本には出会えない。

『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉
 こういう「なんでもない日常」を描くのって難しい。それをこのレベルで書き上げた作者の力量は認めるが、「なんでもなさ」過ぎるんだよなあ。登場人物や出来事が印象に残らず過ぎ去ってしまう。「これ誰だっけ?」「その出来事って何だっけ?」ってことが何度かあった。「それこそが日常だ」と言われれば、そうなのかも知れないが、せっかく読むのだから、記憶に残る人物や事件があって欲しい。実際、どういう物語だったかもう忘れてしまった(笑)。
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by usagi-kani | 2013-09-15 11:51 | 本・ことば | Comments(0)

『幕が上がる』を読んで

平田オリザ『幕が上がる』を読んだ。
高校の演劇部を舞台にした小説である。高校の部活動というと野球や陸上のは結構あるが、演劇を扱った小説は珍しいのではないだろうか。

おもしろかった。
テンポ良く話が展開していくため飽きずに読めた。
ただ、テンポが良い、というのは功罪両面があるのかもしれない。主人公の女の子が悩みながら成長していく姿を描きたかったのだろうが、「テンポの良さ」のために(たいした苦悩もなく)「順調に成長しました」という印象を受けてしまう。本当はもっと苦悩や葛藤を描くべきであったと思うし、書きたかったのだろうが。

また、「深み」もあまりないように感じた。楽しくは読めるのだが、読後に何かについて深く考える、ということはない。読み終えた直後は「いい小説だった。薦めよう」と思うが、1週間もすると読んだという記憶だけになってしまうのではないか。
小説なんて所詮は娯楽なんだから、その時(読んでいるとき)だけ楽しければいい、と割り切れるなら問題ないが、その先の「何か」を求める人には物足りない小説だろう。

それでも、青春っていいな、と素直に思えた。読んで良かった小説だ。

以下、印象に残った箇所を抜き出しておく。

 中西さんは、少し前屈みになって、自分の出番のタイミングを窺っている。獲物を狙う豹のように鋭く、公園で遊んでいる我が子を見つめる母親のように優しく。
 私は、次の出番に向けて舞台袖に立つ俳優の姿が好きだ。その立ち姿を見るのが好きだ。たぶん、こんなに真剣で純粋な眼差しを、普段の人生で、私たちは、あまり目にすることができないから。

「大人になるということは、人生のさまざまな不条理を、どうにかして受け入れる覚悟をすることです」

 中学二年生くらいから高校一年生くらいまで、だからえっと、十三歳から十五歳くらいまで、たしかに私は、何かに苛立っていた。それはみんな、そういうものなのだろうけど、でも、いまならその苛立ちの所在がわかる。
 私は、何ものにもなれない自分に苛立っていた。

 私たちは、舞台の上でなら、どこまででも行ける。どこまででも行ける切符をもっている。私たちの頭の中は、銀河と同じ大きさだ。
 でも、私たちは、それでもやっぱり、宇宙の端にはたどり着けない。私たちは、どこまでも、どこまでも行けるけど、宇宙の端にはたどり着けない。
 どこまでも行けるから、だから私たちは不安なんだ。その不安だけが現実だ。誰か、他人が作ったちっぽけな「現実」なんて、私たちの現実じゃない。

 たぶん私は、私たちを裏切った吉岡先生を許さない。もっと大人になっても、それで、この三週間の出来事を受け入れられるようになるとも思わない。でも、それでも私は、私たちのもとを去っていった吉岡先生を恨まない、憎まない。

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by usagi-kani | 2013-06-22 05:59 | 本・ことば | Comments(0)

もう飽きた…

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読んだ。

私は「好きな作家は村上春樹」と公言するほどの彼のファンであるが、この作品を読んでの感想は「またかよ。もうたくさんだ。」というもの。

主人公のキャラも、物語の展開も、登場人物の会話も、既視感ありあり。村上春樹らしいと言えばそうなのだろうが、これまでの作品から部分部分を引っ張ってきて一作にまとめました、みたいな印象を受けた。「ノルウェイの森」と「国境の南、太陽の西」を足して2で割ったような。

その意味で、初めて村上春樹の作品を読むという人には「これが村上春樹か!」とわかりやすくていいのだろうが、彼の作品を読み続けてきた人には私と同様「またかよ」という感が否めないのではないだろうか。

とにかく新しさが全く感じられなかった。

また、クロ(エリ)がなぜ主人公に沙羅を絶対手に入れろと言うのかも不明。二股をかけてる(しかも不倫らしい)女性との結婚なんて普通は勧めない。一体なぜそんな常識外れのことをするのか。

さらに、緑川さんの「死のトークン」も結局なんだったのか。そのあたりを読んでる時は、これがこの物語の中核になるのかと思ったが、途中から全く出てこなくなってしまったし。「回収できなかった伏線」ってやつなのかな。

今回も買わずに図書館から借りたのだが(それで読むのが遅くなったのだが)、正解だった。買って読むほどの価値はない。
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by usagi-kani | 2013-05-23 06:03 | 本・ことば | Comments(0)
もう随分前のことなので、正確な名前もわからないが、「強面の社長が語った役立つ言葉」みたいなスレがあった。
それの「健康」に関する言葉が印象的だったので、クリップしておいた。

健康になりたくば、風呂に入っている時に、自分の体に触れながら「いつもありがとう」と感謝しろ。体も意思を持っているぞ。


なんかすごく胸に響いて、時々思い出しては実践している。
私はよく足が痛くなるので、足に「感謝」するのだが……確かに効果がある(ような気がする)。以前より痛む回数が減ったような気がするのだ。
いいもの(こと)は少しでも多くの人に知ってほしい……そんな思いから今回記事にしてみた。
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by usagi-kani | 2012-06-28 05:56 | 本・ことば | Comments(0)

久しぶりに本を購入した

「戦争で死んだ兵士のこと」という本を購入した。

震災以来、モノはなるべく持たないように生きようと決めたので、(雑誌以外の)本を買うのはこれで2冊目。

何冊か読んでいる小泉吉宏氏の絵本である。
これまで読んだのは「楽しく哲学を学ぶ」という内容のものばかりだったので、これはかなり異色の一冊だ。

各ページにシンプルな絵と2行前後の文。
ページ数も20ページ強だから、あっという間に読めてしまう。

だが、これはゆっくりと一場面一場面を味わいながら読み進めなければいけない。この場合の「味わう」とは、その場面を細部(前後の出来事や雰囲気、会話や心理など)まで想像しながら読むということ。
そうすることで、「死んだ兵士」の人生を読者はリアルなものとして感じることができるようになる。
その作業がなければ、この本は「ふーん、悪くはないね」くらいで終わってしまうだろう。

どんなふうに失われた生命であっても、そこに至るまでには様々なことがあったのだ。両親の喜びと期待、友人や恋人との出会い、もちろん失敗や恥ずかしい思いも…。
そんな当たり前のことを、当たり前過ぎて見ようともしないことを改めて気づかせてくれる、本当に素敵な本だ。

ただ、注文をひとつ。
「敵の兵士を殺した」というひとコマを是非入れるべきだ。
そうすることで、残虐なことを行なった兵士であっても、決して我々とは別の存在でなく、我々とまったく同様の「平凡な」人生があったことを読者は強く感じるようになるだろうから。
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by usagi-kani | 2012-05-29 05:16 | 本・ことば | Comments(0)