2006年 12月 30日
40歳前後(『国境の南、太陽の西』を読んで)自分の変化を知る……それが本を読み返す楽しみのひとつだろう。
今回、村上春樹『国境の南、太陽の西』を読み返した。
この作品を読むのは2回目である。つまり、一度読んだきり読み返していなかった。村上春樹の作品は大抵数回は読み返している。特に『風の歌を聴け』は30回いや40回は読んでいるはずだ。それなのにこの作品を読み返さなかったのは、最初に読んだときの評価が低かったからである。具体的にどう感じたかまでは覚えてはいない。が、読み返すに値しない「つまらない作品」として長い間本棚の奥に放置されてきた。所在不明にならなかったのが不思議なくらいである。
それを今回たいした理由もなく手にしてみたのだが……。
評価が一変した。これは村上春樹の中でも相当上位にランクされるべき作品ではないか、と。
最初にこの作品を読んだのは14年前。そのときの私はこの本から(おそらく)何も読み取ることができなかった。37歳の主人公に何も共感すべきところを見つけることはできなかった。
だが、今回読み返して、私が感じたのは、「この主人公は私だ」ということ。私自身が描かれている、と感じた。
村上春樹は私より14年早く生まれている。だから、彼がこれを書いたのはちょうど現在の私の年齢ということになる(厳密に言えば、この本の発行が14年前だから、執筆はその数年前ということになるのだろうが)。
14年掛けて私は彼に追いついたのだ。そして、14年前に彼が感じていたものを現在の自分も感じているのだ。だから、「主人公は私だ」との感想を持つに至ったのであろう。
14年前の私にはわからなくて、現在の私にわかるもの……それは主人公が感じている欠落感・喪失感である。
主人公は言う、「僕は幸せだったと言ってもいいと思う。でもね、それだけじゃ足りないんだ。僕にはそれがわかる。いちばんの問題は僕には何かが欠けているということなんだ。僕という人間には、僕の人生には、何かがぽっかりと欠けているんだ。失われてしまっているんだよ。そしてその部分はいつも飢えていて、乾いているんだ。」
まさに、これは、今の私だ。今の私が感じていることだ。
14年前の私には「飢えていて、乾いている」部分はなかった。いや、おそらくはあったのだろうが、視線はそこには向かわなかった。当時の私は、どちらに傾くかわからない現在という不安定なシーソーの上でバランスを取るのに必死であったし、視線はひらすら未来をみつめていたと思う。だから、気づかなかったのだろう。「飢えていて、乾いている」部分がないほど満たされていたはずはないし、そんな人間がいるとは思えないから。
そして、現在の自分。仕事も家庭もあり、いわば安定した地面に下り立った自分は「飢えていて、乾いている」部分の存在に気づいてしまっている。そして、主人公と同様、それを埋めてくれるもの(人)を求めてもいる。果たして私にとってそれは何(誰)なのか……。
主人公の「飢えていて、乾いている」部分を埋める存在=島本さんは「幽霊」なのではないか。少なくとも(主人公と再会後の)どこかの段階では「幽霊」になっていると思う。
島本さんが「幽霊」すなわち「死の世界の住人」であるとすれば、主人公が島本さんを求める心理は「死への誘い」に他ならない。
欠落感・喪失感を満たすことはできない。人はそれを抱えながら生きていくしかない。人がそれから逃れうるとすれば、それは「死」でしかない……そんなことを伝えようとした作品ではないか。
「死」が嫌なら……この欠落感・喪失感を抱えながら生きていくしかない、のだな。
40歳前後とはそんな覚悟を決める年齢なのかもしれない。
村上春樹さん、昔、男の人からもらった本が「ダンス・ダンス・ダンス」でした。それからです。この人の本読み出したの…
『国境の南、太陽の西』、『風の歌を聴け』も多分実家にあるはずです。もう一度読んでみようと思います。
いま読み返してみたら、どんな評価するかなぁ~^^
『国境の…』『風の歌…』はお薦めです! 是非読んでみてください。
この本って、エッチな描写も結構ありますよね。女子中学生がどんな感想を持ったのか、オジサンはそんなところに関心が行ってしまいます(笑)。
まだ読み返すのは早いでしょう。40歳くらいまでとっておいてください。
「勉強しろ」ではなくて「とにかく本を読め」でした。
もちろん父の書棚には、ありとあらゆる分野の本がありましたが・・・
しつこく言われると反発するのが子供心理というもので、
なかなか読書少年にはなりきれず、スポーツの方へ向いて行きました。
二十歳を過ぎた頃からでしょうか・・・父の言葉が想い出され・・・
もっと本を読んでおけば良かった~と思うようになったのは。
教室嘆声
的のない
精神への射撃
あヽ
眼を細めよう
ひそやかな空気で
私の希いを素直に語ろう
教室生態
何か抑えられている、身動きのつかない
暗さ
何かと動いてはいるのだが、
自分の身体ではないような・・・
先生は何か喚いている
先生の胸のなかの計画などわからない
何か一つを掴ませろ!
明るいところへ連れ出せ!
うちは、放任主義だったので、「~しろ」は勉強を含めて言われたことがないです。私はスポーツが苦手なので、本ばかり読んでる少年でした。
お父様の詩を教えていただいてありがとうございます。じっくり味わってみます。