2006年 12月 23日
創作童話「しゃぼん玉」その機関誌(?)「Challenge」では毎年創作童話コンクールが企画されていた。
高校3年の時に応募してみたのだが、佳作に選ばれた。おそらく自分が書いたものが活字になったのはこの時が初めてだったと思う。賞品として図書券千円だかがもらえたのだが、「自分の書いたものが本に載った」喜びのほうがはるかに大きかった。
選者である童話作家の関英雄氏の「評」も併せて掲載する。
「評」にもある通り、「甘いお話」だな、と思う。
実は同じ時期に、エロ小説を書いてクラス内で回し読みしていたりもしたのだが(男子校だった)……。
まあ、こんな物語を書く自分もいた、ということだ。
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しゃぼん玉
ある夏の午後、私が庭へでてみると、みくちゃんがしゃぼん玉を飛ばしていました。みくちゃんは私のいとこです。おかあさんが病気で入院しているので、私の家であずかっている子です。みくちゃんのしゃぼん玉は、屋根とぶつかったり、木の枝につつかれたり、突然はじけたりして、すぐこわれてしまいます。それでもみくちゃんは私に気づくようすもなく、しゃぼん玉を飛ばし続けます。それを見て私は、むかしおかあさんから聞いた話を、ふと思い出しました。
むかしむかし、ある国に、とっても仲のよい男の子と女の子がいました。男の子の家も女の子の家も貧乏でした。でも、二人は森でかくれんぼをしたり、野原で花摘みをしたり、川で水遊びをしたりして、毎日を楽しく暮らしていました。
でも、女の子の胸がちょっぴりふくらみ始めて、男の子のことが好きなんだと気づいたとき、悲しいことが起こりました。男の子が遠くへ行ってしまうというのです。
女の子は毎日毎日泣き続けました。男の子がお別れを言いにきたときも、部屋に閉じこもって会いませんでした。
何日かして、やっと女の子は泣きやみました。そして、もう一度だけ男の子に会いたいと思いました。でも、男の子のいるところはあまりにも遠すぎます。それで、女の子はしゃぼん玉を飛ばしました。男の子のところまで飛んでいって、あたしの気持ちを伝えてね、と願いながら……。
そのころ、男の子は新しい土地と生活になじめないで病気になっていました。ベッドに横たわりながら頭に浮かんでくるのは、女の子との楽しい思い出ばかりでした。あるとき、男の子がふと目を窓の外にやると、そこには美しいしゃぼん玉が見えました。男の子は急に病気が治ったような気がしました。いえ、本当に治ったのです。男の子は窓を開けました。すると、そのしゃぼん玉が入ってきて、男の子の耳もとではじけました。そのとき、男の子は女の子の声を聞きました。「好きです」という……。
それから、男の子はしゃぼん玉をいくつもいくつも飛ばしました。でも、女の子のところには一つも届きません。いじわるな鳥や木や風がみんな壊してしまうから……。そんなことを知らない女の子は、男の子はあたしのことなんか忘れてしまったんだわ、と思って、病気になり、ついに死んでしまいました。
女の子の魂は、天国に行く途中、男の子の家の上を通りました。そして、男の子がいくつもいくつもしゃぼん玉を飛ばしているのを見ました。女の子がその一つに触れてみると、それははじけて「ぼくも好きだよ」という男の子の声が聞こえてきました。女の子はうれしくってうれしくって、泣き出しました。そのとき、やさしい神様が女の子を生き返らせてくれました。男の子の家の近くに……。そして、二人は一生仲良く暮らしました……。
みくちゃんのしゃぼん玉のひとつがやっと屋根の上まで上がりました。そして、やさしい風に流されながらどんどん高く上がっていきます。このしゃぼん玉は、みくちゃんのおかあさんのいる病院まで飛んでいくかしら。そして、おかあさんは、病院の窓からこのしゃぼん玉を見ることができるでしょうか。
■評
センチメンタルな甘いお話という感じもありますが、この作品もアイデアのおもしろさを評価します。しゃぼん玉遊びの童話はむかしからたくさんありますが、この作品は、しゃぼん玉を仲立ちにして死ぬまで愛しあった少年少女の話が挿入されていて、それが、みくちゃんという女の子の入院中のおかあさんへの愛と、うまく重ねられています。
ただ、語り手の「私」が子どもなのか、作者自身なのか、そのへんがぼやかされているのがスッキリしません。
雲、風、月、星・・・
シャボン玉は~すぐにこわれてしまう!というところに、託す側の儚さや悲しさがありますが、それだけに万に一つでも届いたときの悦びがありますよね。
いい年になって、少しはわかるようになったかと思いましたが
エロい物語も、こんなに甘いお話も書ける生き物であったと知り 今更ですが ますます謎めいた存在ですね(笑)
謎だからいいんでしょうね。わかってしまったら関心がなくなってしまいますから。
今なら、その気持ち、少しわかります。
でも、当時は、
そんな男の子の気持ちなんてわからなかったから、
<エロ小説を書いて>それだけで、とんでもないやつだと思っていたでしょう。
しゃぼん玉がとんでいって、言葉を伝える…
その発想おもしろいな♪と思いました。
甘すぎるけど、そんなに悪い話でもないな、と自分では思ってます(自画自賛?)。
私のイメージが壊れるので、それはご勘弁をm(_ _)m