2006年 08月 10日
「大地の子」を読んで7月20日過ぎから読み始めたので、ちょうど2週間くらいかかった。
読み始めた理由は、以前から読みたい気持ちがあったのと「図書館だより」で同僚の先生が絶賛していたからだ。
実際に読んでみて。
主人公陸一心が迫害される上巻は非常に読み応えがあった。
しかし、日中合作プロジェクトに話題が移った中巻・下巻は今ひとつ。
もっと主人公の生活・行動・心理に的を絞って書いてもよかったのではないかと感じた。
事実に忠実に書いた(中国を美化せず)ということなのかもしれないが、中国側のわがままばかりが述べられ、場合(時代の雰囲気など)によっては嫌中感情を煽る結果になる危険性もある。
作者のあとがきにもあるが、この作品を執筆するに当たっては膨大な取材活動を行ったことが察せられる。それだけに、事実からあまり離れられないという呪縛が作者に生じてはいないだろうか。
既読の「沈まぬ太陽」もこの「大地の子」も結末がいまひとつドラマティックではない。現実はこのようなもの(決してドラマティックでない!)なのだろうが、「小説」であるならもっと劇的な終末であっていいと思う。彼女の作品は最後が物足りない。竜頭蛇尾と言っては言いすぎだろうが…。
読んで損したとまでは言わないが、期待が大きかったせいか「こんなものか」との感想を持ってしまった。
ただ、中国人に対して大きな意識の変化が生じた。
たぶん母親からだと思うが、残留孤児のニュースが盛んに報じられていた頃、「中国の人は偉いね。敵の子どもを育てるんだから。すごく心が広いんだね」と聞かされ、それ以来「中国人=心が広い」という刷り込みがなされてしまっていた。
それがこの小説を読んだら、日本人の子どもを育てたのは、別に心が広かったわけではなく、労働力として、あるいは出来の悪い息子の嫁にするためだったとわかって、認識が大きく変わったのだ。考えてみれば、当時の中国の貧しい農村であれば、孤児を馬車馬のようにこき使うのは全く当然のこと。その当然のことに思い至らずにいた自分の「単純さ」「おめでたさ」を自嘲したくなった。
現在までのところ、私のナンバーワン長編小説は「永遠の仔」(天童荒太)。それを星5つとすると、「大地の子」は3個半といったところか。
データに基づいたフィクションだから感動すると。
金子文子さんの『獄中手記』だっけ?!かな???
このような世の中があるのか!?
と・・・ある意味読み応えがありましたよ。
山崎豊子さんの本は、確かにフィクションとはいえ、かなりノンフィクションに近いですね。
お友達の薦めがあるなら、何か読んでみてはいかがでしょうか?
金子さんのは、実際に獄中で生活した記録なのでしょうか?
今までのところそのような経験はないので、確かにおもしろそうですね。